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[深読みNEWS]F1存亡の機(前編)
バーニー・エクレストンの後を受け、うまくやっているようにも見えるチェイス・ケアリーだが… (C)DPPI
 2020年は現行のコンコルド協定とレギュレーションのもとで開催される最後の年であるとともに、F1の存亡を占う重要な年でもある。
 拙稿「RRAの二の舞は必至のフィナンシャルレギュレーション(2019年11月14日ニュースに掲載)」を参照されたいが、F1ビジネスジャーナリスト、クリスチャン・シルトによれば、現在、F1チームの年間予算は平均3億1,200万ドル。これにフィナンシャルレギュレーションによって1億7,500万ドルの上限が設けられれば43.9パーセントの減額となるが、経費のおよそ58パーセントはコストキャップ適用外の分野、つまりマーケティングコスト、ドライバーの報酬、支給額上位3人の従業員の給与、旅費交通費・貨物輸送費、パワーユニットとフューエル・オイルに関連する費用などに割り当てられているという。
 これはアルファ タウリ(旧トロロッソ)の年次財務諸表を見るとよくわかる。
 アルファ タウリはイタリア企業だが、50パーセントスケールの風洞を持つブランチオフィスがビスターに設立されている。英国の2006年会社法においては外国企業の英国子会社は親会社の年次財務諸表を提出する必要があり、したがって子会社が登記された2009年以降のそれが公開されているのだが、イタリアの財務三表は英国より厳密な会計基準で作成されているため、より詳細な内訳を目にすることができるのだ。
 もっとも新しい2018年の年次財務諸表に記載されているアルファ タウリ(当時はトロロッソ)の総収入と経費は以下のとおり(やはりシルトが「フォーブス」誌上でまとめたチャートを引用)。

[総収入]
・レッドブル ペイメント 8,290万ドル
・機材およびスペアパーツ販売代金 80万ドル
・スポンサーシップ 2,950万ドル
・プライズマネーおよびR&D補助金 5,970万ドル
・開発製品の対価の変動 1,070万ドル
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計 1億8,360万ドル

[経費]
・新しい生産機械、新しいハードウェアおよび組み立てラインへの投資 570万ドル
・新しいソフトウェアへの投資 80万ドル
・チームユニフォーム、ステッカー、組み立て工具代金 5,650万ドル
・旅費交通費、メンテナンス代金、ドライバー報酬、水道光熱費、通信費 4,560万ドル
・エンジン代金、不動産リース代金、乗用車レンタル代金、テストサーキット代金 2,260万ドル
・従業員給与 4,000万ドル
・減価償却費 850万ドル
・エントリーフィ、その他メンバーシップフィ、課徴金 140万ドル
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計 1億8,110万ドル

営業利益: 250万ドル
金融収入: 30万ドル
税引き前利益: 280万ドル
税金: 100万ドル
純利益: 180万ドル

 これ以上の詳細は不明だが、いずれにしてもコストキャップ適用外の経費を除外すれば1億7,500万ドルをはるかに下回るわけで、要するにフィナンシャルレギュレーションによる設定額はスモールチームには高額すぎるのだ。
 こんな非現実的な上限額になったのは、言うまでもなく、FOGがビッグチームに譲歩したからにほかならない。近い将来、プレーイングフィールドがイーブンになるとはとても考えられない。
 にもかかわらず、チェイス・ケアリーは「F1オーバーホール交渉は最終段階にある。F1の将来への懸念は解消された。ルール、レギュレーション、コストキャップなどの問題は決着している。中団グループにも勝てるチャンスが生まれるだろう。上位3チームだけが優勝争いをすることはない」(ダボス会議における発言)と性こりもなく念仏を唱えている(中編につづく)。