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[深読みNEWS]F1存亡の機(後編)
 F1は存亡の機にある。
 それは拙稿「異形の怪物、FOG(2019年12月20日ニュースに掲載)」にも記したとおり、F1の総収入の三本柱であるスポンサー料、放映権料、開催権料(2018年の場合、総収入18億2,700万ドルの81.4パーセントを占める)のいずれもが横ばいもしくは下降し、売上高の増加に結びつく材料も見当たらないことからも知れる。
 2017年1月のデルタトプコ買収時、リバティメディアコーポレーションは新規のグローバルパートナー、オフィシャルパートナーをいまにも獲得できると吹聴していたが、2018年の場合、スポンサー料は2億6,640万ドルとリバティ買収前にくらべて1.7パーセントしか増加していない。この間、アリアンツ、UBSそして昨年12月にはタタ コミュニケーションズが契約を終了している。
 放映権料は2017年の6億1,200万ドルから2018年の6億390万ドルと微増にとどまっている。これまで放映権料を押し上げてきたのはペイTV(有料放送)との契約だったが、主要市場におけるフリー トゥ エア(無料放送)からの移行はほぼ完了しており、伸びしろはあまり期待できない。
 しかもペイTVの増加にともない視聴者数は減少の一途をたどっており、2019年も4億7,100万人と2018年の4億9,020万人から3.9パーセントのマイナスとなっている。
 FOGは2019年の視聴者数を対前年比9パーセント増の19億2,200万人と発表しているが、これは集計にキュームレーティブ メソッド(視聴者がグランプリ中継にチャンネルを合わせた回数を累積)という著しく信頼性を欠く方法を用いた結果で、御用メディアはまるで報じていないが、従来のユニークビューワー メソッド(シーズンを通じて連続3分以上グランプリ中継にチャンネルを合わせた視聴者の数)では、前述のとおり、視聴者は確実に減少しているのである。
 そもそもFOGは2018年、ユニークビューワーの集計基準を非連続15分から連続3分に変更したばかりで、これを数字のまやかしと呼ばずして何と呼ぼう。スポンサーが集まらないのも、マーケッターが必要とする実数が隠されているのだから無理はない。
 開催権料も2017年の6億830万ドルから2018年は6億1,670万ドルへと微増しているが、2016年の6億5,300万ドルにくらべると5.6パーセント減少している。ブリティッシュGP、イタリアGP、メキシコGP、スペインGPとの開催契約更新にあたっては開催権料の値下げを余儀なくされたと伝えられ、これは当然、ほかのグランプリも要求するだろうから、売上高をのばすには開催権数をふやすしかない。だが、マイアミでの開催計画が難渋するなど、カレンダーの拡大計画そのものが進展しておらず、サウジアラビアと交渉しているものの、ただでさえバーレーン、ベトナム、中国、アゼルバイジャン、ロシアと人権問題が提起されている国での開催が疑問視されているだけに「スポーツ ウォッシュ」のそしりは免れないだろう。
 こうしてみると、F1に不安定さをもたらしているのはリバティの経営なのだ。
 リバティ傘下のFOGのエクゼクティブたちは、F1では過去10年以上、まっとうな経営が行われてこなかったが、ようやくプロフェッショナルになってほかのビジネスに追いついた、とバーニー・エクレストンをアマチュア扱いするが、プロフェッショナルとはまやかしの代名詞ではあるまい。
 2020年の第二四半期には、オートモーティブマニュファクチャラーの参戦継続の有無やFOGの財務力に改善の見通しがあるのかどうかなどが見えてくるはず。さて、そのとき投資家はどんな判断を下すだろうか。