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[深読みNEWS]F1、もう一つの危機
フェラーリ・ドライバー・アカデミー(FDA)の一員で昨年のF3王者に輝いたロシア人ドライバーのロベルト・シュワルツマン。今年からF2に昇格し、ミック・シューマッハのチームメイトとなる (C)DPPI
 2020年のF2とF3はF1第2戦バーレーンGP(決勝3月22日)のサポートイベントとして開幕する。
 最大の注目株はF2のロベルト・シュワルツマン(20歳)。マカオGPこそアクシデントで結果を残せなかったものの、2019年、そのスピードとコンシスタンシーでF3のライバルたちを蹴散らした。
 現在、F1のグリッドはマックス・フェルスタッペン(22歳)、シャルル・ルクレール(22歳)、カルロス・サインツ(25歳)、ピエール・ガスリー(23歳)、アレクサンダー・アルボン(23歳)、ランド・ノリス(20歳)、ダニール・クビアト(25歳)、ランス・ストロール(21歳)、ジョージ・ラッセル(21歳)、エステバン・オコン(23歳)、ニコラ・ラティフィ(24歳)とグリッドの過半数を25歳以下のドライバーが占めるが、同じFDAメンバーで、プレマのチームメイトでもあるミック・シューマッハー(20歳)をしのいで2021年、彼らの仲間入りを果たすかもしれない。F1ドライバーの世代交代は確実に進んでいる。
 ただし、F1ヤングブラッズの台頭は逆説的にF1の危機を示すエピソードでもある。 
 いささか古い情報で恐縮だが、2015年、トト・ヴォルフがF1ビジネスジャーナリスト、クリスチャン・シルトに語ったところでは、カートからF1までステップアップするには、カートでジュニア、シニア、インターナショナルを通じて100万ユーロ、F4で年間35万ユーロ、F3で年間65万ユーロ、F2で年間150万ユーロから200万ユーロが必要。この間、オートモーティブマニュファクチャラーやチームのジュニアプログラムのメンバーになれればいいが、さもなければ、さらにF1のシートを得るのに200万ユーロから300万ユーロの持参金を要求されるという。つまり、少年少女がF1ドライバーになりたいという夢をかなえるには、すべてのジュニアカテゴリーを1年でクリアする実力があったとしても、最低で650万ユーロもかかるのだ。どうりで裕福な家庭か、モータースポーツの世界に知己のある家庭に育ったドライバーばかりが目につくわけだ。
 FIAはF4、F3、F2というF1へのルートを確立しようとジュニアカテゴリーの整備を進めているが、スーパーライセンスポイント制度以外、目立った動きはない。
 リバティメディアコーポレーションも、F1、F2、F3のオーナーでありながらなにひとつ対策を講じていない。
 持てる者が勝つのではなく、ベストな者が勝つF1にしたい、と言ったのはあなたがたではないのか。
 F3からF2への昇格制度(そしてまたは降格制度)や奨励金制度など、すぐにでもつくれそうなものだが、これではグラスルーツが、ひいてはファンのすそ野が広がるはずがない。
 最近、筆者が監修したF1模型の雑誌を近所の学習塾に通う小学生の男の子たちにプレゼントしようとしたら、だれも関心を示してくれなかったことがあった。筆者が子どものころは小づかいをためてタミヤの1/20グランプリコレクションシリーズを買い、「オートスポーツ」を読みあさり、TBSの月1回のダイジェスト中継にかじりついていたのに、と嘆息すると、塾の先生が、最近は男の子でもF1に興味を持っている子はほとんどいない、と教えてくれた。理由はいろいろあるだろうが、F1にヒーロー――それもワーキングクラスヒーローが――ほとんどいない、つまり同じ夢を持つことができないこともその一つだろう。
 子どもが夢中になることができないスポーツにあすはない。
 これはF1、もう一つの危機だ。