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[深読みNEWS]ポスト・コロナは意外な新規参戦のチャンス(その2)
FIAのトップ、ジャン・トッド(写真右)とFOGのトップ、チェイス・ケアリー(左)の真の狙いは、ビッグチームの資源を再配分による新規参戦促進かもしれない (C)DPPI
 新型コロナウィルス禍で今後存続が危ぶまれるチームがあるのならば、ビックチームのレッドブルやフェラーリが提唱するカスタマーカー容認の方向にF1が舵を切る可能性もある。それを容認するか否かは、世界経済が低迷するたびに過去、幾度となく論戦がくり返されてきたテーマだ。直近では2013年、FOGがシャシーとエンジンを調達し、希望するチームに定額で販売するアイデアをバーニー・エクレストンが披露したが、フランク・ウィリアムズを中心とした、F1の存在意義が損なわれるとの反対意見の前に実現には至らなかった。
 ホーナーの提案にも、求められているのは巨額すぎるビッグチームの予算の削減であり、論点のすりかえであるとの批判は少なくなく、ザク・ブラウンは、F1はコンストラクターによるチャンピオンシップであり、そのDNAは技術革新にこそあるという認識にそぐわない、との立場を明確にしている。
 ウィリアムズやブラウンがカスタマーカーに反対するのは、自動車製造メーカーのファクトリーチームとそのカスタマーチームとにフィールドが大別された場合、みずからがはみ出し者となるからだ。
 コンストラクターではあってもパワーユニットの製造メーカーではない彼らは、経営資源的にファクトリーチームには太刀打ちできない。そのうえ、年間予算8,000万ドルでファクトリーチームに準ずる競争力を備えたカスタマーチームの攻勢をしのがなければならなくなれば、トップコンテンダーに返り咲くどころか、そのビジネスモデルが成立しなくなってしまう。
 ただし、ホーナーが、どのみちカスタマーカーの時代は始まっている、と口にしているとおり、2020年のグリッドには、それぞれメルセデスAMG、フェラーリ、レッドブルの2019年型車、W10、SF90、RB15のクローンといえるレーシング ポイントRP20、ハースVF20、アルファタウリAT01が並ぼうとしている。そもそも、すでに競争力が証明された車をコピーするのは合理的。しかも、世界恐慌に匹敵する景気後退も予想され、「Aチーム」と「Bチーム」の関係がさらに深まるのは避けられそうもないのもまた、事実であろう。
 もっとも、FIAとFOGには、サードカーもカスタマーカーも認める考えはないはずだ。なぜなら、どちらの方法にしてもチャンピオンシップの運営がビッグチーム頼みになり、権力の移譲につながるからだ。
 むしろFIAとFOGは、姿を消すチームがあるとすれば、それはファクトリーチームであり--自動車業界はパンデミックによってすでに1,000億ドルの減収になっているとの推測もあり、ことによってはスモールチームより撤退を選択しやすい状況と言える--かつ、彼らがF1を去ったとしても、新型コロナウィルス禍を奇貨として、かわって新規参戦を果たすチームが登場すると踏んでいるふしがある。
 ベースコストキャップの引き下げを契機にプレーイングフィールドの平等化が期待できるだけでなく、ビッグチームが余儀なくされる従業員の大量解雇(※)により、優秀なプロフェッショナルも容易に雇用できる。実のところ、ポスト・コロナの参戦のハードルはここ最近になかったほど低いのだ。
(5月6日ニュース掲載の「[深読みNEWS]ポスト・コロナは意外な新規参戦のチャンス(その1)」も合わせてご覧ください)

※「アウト モーター ウント シュポルト」によれば、FIAは退職金(チームあたり総計600万ドルまで)をコストキャップの適用除外項目とすることで人員整理を促す方針