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[深読みNEWS]2020-21シーズンのウィンターシリーズ化も
オーストラリアGPキャンセルの発表をするFOGのケアリー。この会見ではドタバタ劇をさらしてしまったが、この先のリスケジュールについてうまい手綱さばきを見せることができるだろうか? (C)DPPI
 オーストラリアGPのどたん場での開催中止はFOG(フォーミュラワングループ)のマネジメントスキルの欠如をあらためて感じさせた。泥縄の対処の原因はフォースマジュール条項の解釈をめぐるローカルプロモーターとの見解の相違にあったらしく(※1)、いずれチェイス・ケアリーはその責任を免れまいが、喫緊の課題はカレンダーのリスケジュールにある。
 情報を総合するとシーズンはアゼルバイジャンGP(決勝6月7日)でスタート。ファクトリー シャットダウンを4月に前倒しし(※2)、サマーブレイク(夏休み)にあてられている8月にグランプリを開催。さらにシーズンを12月6日まで延長し、延期されたイベントを可能な限り、ふたたびカレンダーに組み込むというプランが検討されている(※3)。
 さらに、新型コロナウィルスの感染拡大が沈静化する時期の見通しが立たないことから、2020年と2021年が年をまたいだウィンターシリーズになる可能性もある。
 新型コロナウィルスの感染終息時期は早くとも7月、8月との予想もある。カレンダーをリスケジュールしたところでさらにイベントのキャンセルが続けばチャンピオンシップが成立しなくなるおそれがあり(最低8戦の開催が必要)、チームが2020年型車に投じてきた巨額の研究開発費がふいになる。
 また、フォースマジュール条項の適用によってイベントがキャンセルされた場合、放映権料への影響はないものの、開催権料(2019年は全21戦で6億210万ドル、つまりイベントあたり2,867万ドル)とスポンサー料は減少が必至で(※4)、ひいてはチームが受給するプライズマネー(FOGの営業利益の68パーセント)も減額されることになる。イベントが開催されなければ経費も発生しないのでチームの存続がすぐさま脅かされることはないだろうが、プライズマネーは平均してチームの年間予算の35パーセントを占めており、2021年型車の研究開発に影響が及ぶのは避けられない。
 そこでFIA、FOG、各チームは2021年のテクニカルレギュレーションの抜本的変更を2022年に先送りすることで合意したが(※5)、2020年の開催戦数が8戦を割り込み、ノンチャンピオンシップイベントとなるならば、コンコルド 協定」を暫定的に更新したうえで、2020年の秋に開幕して2021年の夏に閉幕するカレンダーを構成して2020年型車を走らせたほうが得策だ。
 2020-21シーズンのウィンターシリーズ化はF1の中期的安定にも寄与するだろう。
 新型コロナウィルス禍は当然、オートモーティブ マニュファクチャラーにも影響を及ぼしている。コンコルド 協定にかわる協定締結交渉が進められているおりしも、経営環境の悪化を理由にF1を撤退するという選択肢をとらないとも限らない。だが、2020-21シーズンをウィンターシリーズにすれば、FOGはオートモーティブ マニュファクチャラーに熟考の時間を与えることができる。
 オーストラリアGPの開催中止をめぐっては優柔不断をさらしたFOGだが、果断を下すかどうか、注目だ。


※1: FOGとローカルプロモーターが締結しているグランプリ開催契約には不可抗力条項が規定されており、戦争、暴動など、前車検より前に発生した不可抗力によってイベントがキャンセルされたとき、ローカルプロモーターは開催権料の支払い義務を免れる。感染症の発生は一般的に不可抗力と見なされるが、契約では、安全保障、テロリズムの危険もしくは感染症の発生を理由とする場合、監督当局による大規模行事の中止を前提とするともされ(ビクトリア州政府は制御措置を実施していなかった)、FOGが開催権料(通常、前払い)の返却に難色を示したのではないかと考えられる

※2:スポーティングレギュレーション21.8においては閉鎖期間は7月そしてまたは8月とされているが、これを3月そしてまたは4月とし、期間も連続14日間から連続21日間に延長する案がWMSCで承認された。日程は各チームの任意による

※3:スポーティングレギュレーション1.2および5.5においては開催年の1月1日よりあとのカレンダーの変更には全会一致の合意を必要とされているが、2020年のカレンダーの組み直しについてはFOGに一任されることになった。
 FOGは次の修正を検討しているという。
アゼルバイジャン(決勝6月7日)
カナダ(決勝6月14日)
フランス(決勝6月28日)
オーストリア(決勝7月5日)
ブリティッシュ(決勝7月19日)
スペイン(決勝7月26日)
ハンガリー(決勝8月2日)
オランダ(決勝8月23日)
ベルギー(決勝8月30日)
イタリア(決勝9月6日)
シンガポール(決勝9月20日)
ロシア(決勝9月27日)
日本(決勝10月11日)
US(決勝10月25日)
メキシコ(決勝11月1日)
ブラジル(決勝11月15日)
バーレーン(決勝11月29日)
アブ ダビ(決勝12月6日)
 ベトナムを日本の前後に組み込むことも考えられているようだが、その場合、フライアウェイでの3週連続開催となるため困難も予想される。
 中国共産党にとってグランプリの開催は新型コロナウィルスを克服したとの格好のアピールになるが、中国はキャンセルが濃厚。
 モナコはキャンセル。ストリートコースの設営には準備に6週間程度必要とする。同様の理由で公道を利用するオーストラリアも開催は絶望的

※4: 全開催戦数が15戦に満たなければ放映権料は減額されるが、フォースマジュール条項が適用された場合はこの限りでない。
 イベントがキャンセルされたり、テクニカルトラブルなどのために国際映像が供給されなかった場合、代替イベントが開催されない限り、スポンサー料は減額される。イベントのキャンセルにあたっては、パドッククラブのチケット代金は払い戻しとなる

※5: FIA、FOG、各チームは19日に電話会議を催し、2021年も2020年型車を使用することで合意した。経費削減のため、一定数のコンポーネントの研究開発も凍結される。
 ただし、ファイナンシャルレギュレーション(=バジェットキャップ)は予定どおり導入される見込み