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[深読みNEWS]ありえない話ではない、ハミルトンのアストン移籍
自身の将来についての質問に「ウォルフ次第」と意味深な発言もしていたハミルトン(右)とウォルフ代表/メルセデスAMG(C)DPPI
 新型コロナウイルス禍にいかに対応するか、FIA、FOG、10チームはZoomミーティングをつづけているが、コストキャップをめぐって協議は膠着状態に陥っている(4月29日ニュース「[深読みNEWS]解説:膠着状態のコストキャップ協議、これまでの動き」を参照)。
 フェラーリのマッティア・ビノットとマクラーレンのザク・ブラウンが論戦を加熱させるなか、興味深いのは、ここまで中立を保っていたメルセデスAMGのトト・ウォルフに妙な動きが伝えられることだ。
 ウォルフは当初、オポチュニズムに基づいたものでないのなら、と上限額1億ドルを容認する姿勢を見せていた。
 ダイムラーは、チーム(メルセデス・ベンツ グランプリ)が独立採算を実現できるなら、諫言すれば、ファクトリーチームに対する投資額を事実上ゼロできるなら、F1活動を継続したい意向だとされ、ウォルフの態度もこれを反映したものと受け止められていた。
 ところが、ウォルフは、直近の会議でこれまでと真反対の発言を行い、出席者を当惑させているという。
 ヘルムート・マルコは独ウェブサイト‘F1-insider.com’に次のように明かしている。
「2、3週間前まではね、ウォルフは上限額の引き下げを認めてもいいっていう態度だったんだよ。1億ドルでもいいってね。それが急に、1億4,500万ドルが望ましいなんて言い出したんだ。
 ドライバーのサラリーだって、上限の設定を2021年にも実現すべきだって言い張っていたのに、最近は、2025年までにってね」
 ヴォルフは先ごろ、3,700万ポンドを投じてアストン マーティンの株式0.95パーセントを取得している。彼自身は、当面、現職にとどまる、と口にしているが、当面、とは2020年末までをさしており、早晩、アストンのCEOに就任するとの噂には根強いものがある。
 Zoomミーティングでのトーンダウンの理由も、今後、数年以内にチャンピオンシップを獲得するというローレンス・ストロールの意向を受けたもので、コストキャップによってアストンの競争力強化、そしてルイス・ハミルトン獲得の方針が妨げられないようにするためだとの見立てだ。
 F1の歴史をすべて塗りかえられる可能性のあるハミルトンがメルセデスAMGを去るわけがない、というのが一般的な声ではあるが、ダイムラーにファクトリーチームに対する投資を縮小したい意思があるなら、キャリアの最後を、ウォルフの率いるアストンで迎えるという選択をしても不思議ではない。
 ただし、WMSC(世界モータースポーツ評議会)は、すでに発表されたスポーティングレギュレーションとテクニカルレギュレーションにかかる変更(※)に加え、インターナショナル スポーティング コードにセーフガード条項を加えることを承認。F1のみならず管轄するチャンピオンシップすべてに関し、新型コロナウィルスによるパンデミックのような特殊事態においては、コンペティターの過半数の同意を得ることを条件に、レギュレーションの緊急変更を実施する権限をFIAに付与した。
 仮にFIAがベースコストキャップと適用除外項目の見直しを、過半数のチームの賛同を得て実行すれば、ストロールのもくろみは砕かれるおそれもあるが、ウォルフとハミルトンの動向には今後しばらく注目が集まりそうだ。
 
※新型コロナウィルス禍の対応策として改定されたレギュレーション内容:
テクニカルレギュレーション:
2021年に行われることになっていた抜本的変更を2022年に延期することがすでに発表されているが、加えて2021年はサバイバルセルほかのコンポーネントのホモロゲーションが実施される(詳細未定)。DASは2021年のテクニカルレギュレーションでは使用が禁止され、搭載が認められるのは2020年限りとなった。
 
スポーティングレギュレーション:
レギュレーション変更に要する全会一致の原則の一部撤廃、パワーユニットマニュファクチャラー シャットダウン条項の追加、2022年型車の空力開発の年内禁止など、下記の変更が加えられた。

[レギュレーション変更に要する全会一致の原則の一部撤廃]
 従来、チャンピオンシップ開催前年の4月30日よりあとの規定変更には参戦全チームの合意を必要としていたが、一部の規定については60パーセントの合意をもって足ることになった
[全会一致の合意によらないカレンダーの変更]
 従来、チャンピオンシップ開催年の1月1日よりあとのカレンダーの変更には全会一致の合意を必要としていたが、無投票での変更を可能とする権限がFIAとFOGに与えられた
[ヤングドライバーズテストの日程変更]
 ヤングドライバーズテストは最終戦が開催されたサーキットにおいてイベント終了後48時間に1日、カレントカーを用いて実施される。当日は同時に2台を走らせることができる
[インシーズンタイヤテストの中止]
 つごう25日間予定されていたインシーズンタイヤテストは中止された
[ファクトリーシャットダウン期間の延長]
 公衆衛生にかかる問題や政府による制御措置が継続され、各チームのファクトリーシャットダウンピリオドを超えた場合、閉鎖期間を延長し、全チーム一律に適用する(現在、閉鎖期間は63日に延長されている。ただし、閉鎖50日後は、各チーム10人に限り、業務を再開できる。エアロダイナミクスにかかる業務は認められない)
[パワーユニットマニュファクチャラー シャットダウン]
 パワーユニットマニュファクチャラーには従来、ファクトリーシャットダウン規定が適用されていなかったが、3月そしてまたは4月に、連続21日間の閉鎖が義務づけられた。
 ファクトリーの所在国によって別に閉鎖期間が設けられている場合、閉鎖日数を振り替えることができる。
 パワーユニットマニュファクチャラー シャットダウンはサードパーティ(第三者)のF1にかかる業務にも適用される。
 公衆衛生にかかる問題や政府による制御措置が継続され、各チームのファクトリーシャットダウンピリオドを超えた場合、閉鎖期間を延長し、全パワーユニットマニュファクチャラー一律に適用する(現在、閉鎖期間は49日に延長されている。ただし、閉鎖36日後は、各社10人に限り、業務を再開できる)
[パワーユニットエレメントの規定数の変更]
 各ドライバーがグリッドペナルティーを科されることなく1シーズンに使えるパワーユニットエレメントの数は、イベント開催数により以下の通りとなる。
 14戦以下の場合:ICE 2基、MGU-H 2基、TC 2基、ES 2基、CE 2基、MGU-K 2基
 11戦以下の場合:ICE 2基、MGU-H 2基、TC 2基、ES 1基、CE 1基、MGU-K 2基
[2022年型車の空力開発の年内禁止]
 2022年型車の空力開発はウィンドトンネルテスト、CFDシミュレーションとも、2020年3月28日から2020年12月31日まで禁止